モノと請求が連動しない場合のVATの取扱い

コラム執筆者 Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd. 片瀬さん
Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd.
President Yohei Katase
【プロフィール】
日本の大手税理士法人にてそのキャリアをスタートさせる。日本国内の税務業務を経験した後、その活動のフィールドを海外に移す。アセアン各国の税務及び日本の国際税務を専門とし、国際税務関連の書籍の執筆も多数行っている。2012年からは、現地でのコンサル会社の立上げのために単身でメキシコに渡り、日系企業(自動車関連)の進出から進出後の会計税務、人事労務までをワンストップでサポート。メキシコから帰国後は、アセアン各国を自身のフィールドとし、2016年7月からタイのバンコクにてBridge Note(Thailand)Co.,Ltdの代表者として活動中。

モノと請求が連動しない場合のVATの取扱い

皆様こんにちは、Bridge Note (Thailand) Co.,Ltd. の片瀬です。前回のコラムは、“タイにおける移転価格税制”というタイトルで今後のタイの移転価格税制の動向を記載いたしました。

今日は以前クライアントからもらった質問について興味深いものがありましたので、少しだけ形を変えてお知らせしようと思います。

皆様も海外取引を行っていれば「VAT(付加価値税)」の取り扱いに少なからず悩んだ方もいらっしゃると思います。
是非、参考にしていただければと思います。

タイの顧客B社に対して、当社の下請けのA社(日本)が据付工事を行います。

その際一部の消耗品については当社の孫会社(タイ)が現地にて調達を行う予定です。
具体的には下記の図を見てみましょう。

【取引図】

ビジネスの内容を見てみますと、モノ(消耗品)はタイ国内で動き、役務はA社がB社に提供するというシンプルなものですが、請求関係はなんとも複雑です。

モノの請求に関しては、「消耗品請求①:孫会社から子会社への請求」、「消耗品請求②:子会社から親会社への請求」、「消耗品請求③:親会社からA社への請求」、これらの請求からなり、役務の請求に関しては、「工事請求①:A社から親会社への請求」、「工事請求②:親会社からB社への請求」からなります。

つまり2つの取引について合計5つの請求が介在します。

消耗品請求

モノと請求が連動しない場合のVATの取扱い

【消耗品請求①】
POINT:タイのVATを含めるかは微妙なところですが、含めていない企業が多いように思います。
タイにてモノが移動しているために本来であればタイにてVATが課されるべきですが、孫会社はモノの最終消費者ではないためにVATを含める必要はないというのが論拠となります。

今回の事例では特に工事請求②において当該消耗品の金額を含めて役務提供とされており、最終的にはB社が自主申告によるVATの支払(サービスの輸入に係るもの)をしているために、消耗品請求①においてVATを含める必要はないと主張できそうです。
※もし、これがモノの移動だけの場合にはB社にVATを負担させることができないためにいろいろとリスクが高くなりますが・・・

【消耗品請求②】
POINT:手数料を含めた金額で請求する場合には、当該手数料部分については日本国内での役務提供に該当するために日本の消費税が課税されます。
立替金の請求とすれば日本の消費税は課税されませんが、手数料収入を計上しない場合には、手数料収入分の寄附金課税(無償の役務提供)のリスクがあります。

また、立替金部分と手数料部分の金額を明確に区分していなければ、全てが国内取引に該当するとみなされ全額に対して消費税が課されます

【消耗品請求③】
POINT:手数料を含めた金額で請求する場合には、当該手数料部分については日本国内での役務提供に該当するために日本の消費税が課税されます。
基本的には消耗品請求②の内容と同じです。
ただし、消耗品請求②において、子会社に手数料を支払っている場合には、A社への手数料の請求は基本的に同額以上にする必要があります。

工事請求

モノと請求が連動しない場合のVATの取扱い

【工事請求①】
POINT:工事&SVはともにタイのB社に対して行われており、日本の国内取引には該当しません。
そのため当該請求に関しては日本の消費税を課する必要はありません。

ただし、日本のA社において工事スキームの構築&とりまとめが行われているのであれば、その部分に関しては日本の国内取引に該当しますので、消費税を計上して請求する必要があります(請求において金額を分けている場合)。

【工事請求②】
POINT:タイにおいてサービスの輸入に関しては、自己申告でのVATの納付が必要となります。
そのためにB社においてはサービスを輸入する時点においてVATが課税されます。

また、工事請求①に日本国内で付加価値を乗せて工事請求②において請求する場合には、その利益(付加価値)については日本の輸出免税の規定が適用されるものと考えられ、日本での課税はありません。

このような会社が複数出てくるパターンや三国間取引に関しては、消費税や付加価値税の取り扱いが一気に難しくなりますので、しっかりと取引内容を確認して、間違いがないようにする必要があります。
8%や10%の追加税金負担は利益を一瞬で吹っ飛ばしますのでVATの取扱いは、特に注意深く検討してもらえればと思います。
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