業務の標準化
皆様こんにちは、Bridge Note (Thailand) Co.,Ltd.の片瀬です。
今日のコラムは「業務の標準化」についてです。日本においても「業務の標準化は必要である」と声高に言われていますが、実はコンサルやシステムを入れて業務の標準化を目指した企業の多くが“金をドブに捨てた”と思っている現状があります。何故そのようなことが起こってしまうのか。
私は仕事がらお客さんから次のような言葉をよく聞きます。
「業務の標準化が必要なのは分かるけど、、、現場の実情に合わないんだよねぇ、、、」
この「現場の実情」とはいったい何なのかを考えることが無駄なお金を使わない第一歩になります。
少なくとも欧米では業務の標準化がどんどんと進み、RPA(Robotic Process Automation)やDigital Laborなどの言葉が一般的?になってきています(個人的には、いろいろ名前があって覚えられないので全てまとめて自立型AIで良いです。そもそもロボットではないように感じますし・・・)。
欧米と日本の違いは何か、何故日本では標準化が達成できないのか。それは日本人の働き方に原因があるのです。
日本人然とした働き方
総合職とは(終身雇用を前提とした)凄く日本的な考えです。
このような考え方が浸透していることこそが「業務の標準化」ができない大きな原因です。
職務内容を厳密に取り決めることなく採用されているのが総合職だと思いますが、個人的には総合職の延長線上に経営はないと思っています。経営は技術職の一つです。総合職であらゆる現場を学び会社の内情が分かったから経営者になれるなどは幻想です。
「上司に現場を知らない人がやってきた」と日本では良く聞きますが、経営者・管理者が知るべき現場と従業員が行っている現場との乖離には圧倒されます。
現場を知らない上司が現場を回せないのであれば、従業員が作り上げた現場に問題があることの方が多いです。
そもそも10年前に内部統制があれだけ流行ったのは「誰でも回せる現場」をどの会社も作っていなかったからですし、内部統制ルールを作っても意味がないと考えられてきてしまったのは、ルールがあっても従業員が勝手に動く(自分だけが回せる現場を作る)からです。会社の指示命令系統に従わない従業員は正直必要な人材とは言いづらいです。
ただし、経営者にも問題があることが多く、、、従業員に気を使って組織的な決断ができない経営者が日本には圧倒的に多いです。
理由は皆同じで、「いなくなったら現場が回らなくなるから」です。
その部門が収益部門であるか、コスト部門であるかによって考え方は変わりますが、コスト部門であればいなくなって現場が回らなくなることはありません。
(暗に強調すると)一切のダメージがありません。収益部門ではいなくなった場合のダメージが大きい場合がありますので、そのような場合は個人的には会社をプレゼントすれば良いと思っています。
会社を与えることによって「お前には期待している」と言うことができますし、上手くいかなくても切り離すことが容易ですし、上手くいったら上納金でウハウハです。
現場を回らなくさせているキーマンは本気で「業務の標準化」に取り掛かるとどうしても辞めてもらわなくてはならなくなります。
でも辞めさせたくない、辞めろとは言えない、利益も出しているし、、、なので「業務の標準化」ができないのです。本気で会社を変えたいというのであれば人との付き合い方も変えなければならないと思います。
経営者の人との付き合い方は、「期待して遠ざける」、「期待しないで近づける」がポイントです。
私は会社が育ってきたらマネージャークラスには、まず自分の資産管理会社を作って欲しいと思っています。
雇用契約から業務委託契約にして、給与所得では控除できなかった各種経費を会社につけてもらい、彼らに最適なプランニングをしたいと思っています。
もちろん副業も大歓迎(会社への報告義務は課しますが)。今や時代が進化するスピードが速すぎます。
現時点で最適な人材が10年後は荷物になってしまう可能性もあるので、短いローテーションで関係を持ちながら少しずつ外に出すような形を作った方が良いと感じています。
業務の標準化
「業務の標準化」は人との闘いです。
上記では収益部門のキーマンとの付き合い方を書きましたが、これがコスト部門のキーマンの場合には全くの別の話でただただ辞めてもらわなくてはなりません。
なのでコストセンターに人を雇うことは、誤解を恐れずにいうとムダでしかありません。現在雇っているコスト部門員は営業管理を経由して、営業部門への道を作るなど、収益部門への振替を検討する必要があります。
ちょっと前に流行ったBPO(Business Process Outsourcing)などのOutsourcingビジネスも近い将来なくなると思います。
もちろん普通の派遣業も同様です。これも「業務の標準化」と人の闘いの大きなポイントです。コスト部門から収益部門へ従業員を移管させ、必要な個所は当初派遣で賄うこととなります。
ただし、派遣には大きな問題があり、今後永続的に続くビジネスではありません。
それは「人に依存する」ということです。人に依存するということは、「品質」、「リードタイム」、「人件費」が一定ではないということが起こります。将来的にはこれがRPAなどに置き換わり、退職リスクのない高品質なRPAが24時間稼働するということが現実に起こり得ます。
では現実的に直近でRPAの導入が進むかというとそれもまた違います。
現在ソフトウェア自体が高額(中央管理型だと数百万円から数千万円)であり、かつ、ソフトを入れただけでは利用することが難しく、導入するための教育が必須になり、それが長期間に上ります(3~6か月程度)。
そして、現在の従業員も引き続き存在するので、コストが二重で必要になるのです。RPAの記事等を読んでいると成功事例に「人間にしかできない業務にマンパワーをさけるようになった」と良くありますが、楽になった分で(職種を変え)他の業務に注力しているかというとそれはできていないようです。
少なくとも現状コストメリットを得られるのは大企業だけであり、中小企業がRPAを導入するのはまだまだ先のこととなりそうです。
業務効率化(標準化)のコンサルを続けてきて思うことがいくつかあります。
①社長が自社の業務内容を把握していない
②業務フローや業務記述書がない
③IT化しなければ最大限効率化できない
④IT業界が高度化し過ぎており理解ができない
⑤人によって運用が邪魔される
⑥人があぶれる
⑦売上に対するアプローチがない
⑧コストが二重で必要となる
事前準備が非常に大切です。
社長が知らない従業員の独自ルールをまずは炙り出す必要があります。
現在行われているすべての業務を確認したうえで、IT化すればどこがどのように繋がり自動化されるかを確認し、その上であぶれた人に何をやらせるか、誰が改善業務を主導するか、(単純計算で)あぶれた人の人件費とIT化費用のコストメリットはあるか、などこれらを全て残らずに検討した上で意思決定をする必要があります。
ここで問題なのはシステム会社が内部統制ルールの構築はできませんし、会計事務所がシステムの開発はできません。
将来的に両者は歩み寄ることになりますが、まだまだ歩み寄りが進んでいるとは言えません。
※これは会計事務所の仕事をシステムが奪っている現状を会計事務所が納得できていないので、組もうとしないことが原因です。
また、社内で改善というと反対意見も出てくるために、最初は水面下で始めなければなりません。
内部統制ルールの構築と謳うと社内の反発が出るので、業務マニュアルの作成と銘打って始めることが良いかと思います。社長自身はしっかりと回っていると思っていた通常業務のムダは視覚化しなければ明らかになりません。まずは視覚化から始めてください。システム会社に声をかけるのは業務マニュアル(内部統制ルール)を擦れるまで検証した後です。
数字の視覚化が財務DD(デューデリジェンス)です。
ただし、現状の会計事務所の財務DDは業務との紐づけがあまりなされておらず、数字の視覚化だけです。
すべての事象には原因と結果があり、ここでの原因は「業務」で、結果は「数字」です。
業務(原因)を変えなければ数字(結果)は変わりません。
業務マニュアル(内部統制ルール)を確認し、現在の数字と紐づけるために財務DDを行い、改善をした場合に数字にどのように影響するかまで、やるなら全部やった方が確実な効果が見込めます。会社の「経営企画」のアドバイザリーとして、数字のプロとITのプロは絶対に必要で、顧問料としてお金を払うポイントとなります。
今までのように税務リスクに対する保険として税理士と顧問契約を結ぶのは・・・であり、顧問とは会社を共に発展させていく同士でなければならないと切に感じています。
改善には体力がいるので途中で息切れしないようご注意ください。
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