パーパス経営とは?
唐突ですが、「パーパス経営」という言葉を聞かれたことはありますでしょうか?
多くの企業では昔から“企業理念”や“創業の精神”、“ミッション/ビジョン”といった言葉が制定され、だいたいどの会社のホームページにも一番最初に掲載されています。ただし社員がこれらの言葉を知らなかったり、単なるお題目となっているケースも少なくありません。神棚に飾られていればまだいい方で、不祥事を繰り返す企業のホームページを見ると、見ている方が恥ずかしくなるような立派な?経営理念が記載されているような場合もあります。企業は最初に何らかの理想や事業の目的があったからこそ設立されたはずですが、その後長い年月が経過し、創業時のメンバーも引退した後には何のために会社があるのか、何を目的として事業活動をしているのか、社会の中でどのような役割があるのか、いつの間にか当事者である経営者、社員すら答えられないようでは、単に利益のみを追求する存在になりかねません。
SDGs(国連が定めた持続な可能な開発目標)、ESG投資の潮流が経営の主要課題となりつつある現代では、バブル期のような利益一辺倒の考え方では株主からでさえ受け入れられなくなりつつあると言えます。そこで企業がそもそも何のために存在しているのか、何を目的として事業活動をしているのか、改めて整理して企業活動に反映する“パーパス経営”という概念が脚光を浴びるようになってきました。
パーパス経営の意味するところ
自分たちの存在意義(パーパス)は何なのか、何を目的として事業活動を営んでいるのか、その結果どのように社会に貢献するのか、改めて明文化して経営者の経営判断の拠り所として、社員の働くモチベーションの源泉として、地域社会/取引先/株主他の企業活動への理解を得ることが、パーパス経営の意味するところと言えましょう。
日本でも以前から企業活動の目的は単に利益追求のみではないという考え方はありました。代表例として、近江商人の“三方よし”や、昨年のNHK大河ドラマの主人公だった渋澤栄一の“論語と算盤”などがあげられます。これらの考え方や概念もパーパス経営に通じていますし、現に伊藤忠商事は近年“三方よし”を改めて企業理念として制定したほどです。企業が持続的な企業活動を可能にするためには株主だけでなく様々なステークホルダーの理解と協力が不可欠で、そのためには社会の一員として社会課題の解決に貢献事が今後一層企業には求められます。明文化された存在意義(パーパス)は、企業活動の将来を示す大事な羅針盤となるでしょう。
単なるお題目で意味がない
もっとも企業で働く身としては、パーパスと言っても以前からあった企業理念とかの焼き直しなのではないかと受け止める人が多いのも現実かと思います。日系グローバル企業では、企業理念を知っているのは日本人社員だけで海外の社員は全く知らないというのもよく聞く話しです。経営陣、社員が議論を重ね、自分たちが何のために仕事をしているのか、自分たちから出てくる言葉で表現できなければ意味がありません。企業の存在意義が分かりやすく明確で納得感があれば、難しい経営判断の判断軸になりうるし、そこで働く自分の仕事に誇りも持てるし、株主や取引先にも自信を持って自社の活動への理解を説明できるようになってくると思います。混沌とした社会情勢、経済環境下、“株主に聞かれたから。。”策定するのではなく、今後自社は何のために存在するのか、どのように社会に貢献する存在と言えるのか、改めて考える機運が多くの企業で出てくればと願っています。
今回コラムを執筆頂いた方のプロフィール | |
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鎌倉 俊太郎 (ペンネーム) 某大手コンサルティングファーム 監査役 日本公認会計士。慶応義塾大学卒。大手ITベンダー、コンサルティングファームにて、IT、会計分野における企業のコンサルティングに多数従事。(ご本人の希望により、仮名で記載しております。ご了承ください。) |
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