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執筆者の写真鎌倉 俊太郎

経営責任について考える


身近なDX - 経費精算システムを考える

経営責任という言葉を耳にすることが増えてきた


 3月期決算の企業にとって10月末から11月にかけては中間決算がまとまり現実的な通期業績見通しが視野に入ってきた時期かと思います。残念ながら今中間決算期では昨年度とは様相が異なり、不振気味な上半期の業績と通期業績見通しを下方修正する企業が増えました。なかには対前年で利益が半減、場合によっては8割9割減となる企業もあり、そのような企業の決算説明では経営責任に言及する場面もありました。


 経営トップでもない私が経営責任について語ろうなどとおこがましいつもりは毛頭ありませんが、決算説明の場で社長が「社員の雇用を守ることが経営の責任です」と力説されるのを聞くと、何か昭和の時代にタイムスリップした既視感というか、違和感を覚えましたので、今回はいちステークホルダー目線でよく聞く経営責任について少し考えてみたいと思います。

 

いろいろな責任の取り方


 一般的には何か問題が起きたときに経営トップの責任の取り方は辞任か、あるいは問題の解決施策の提示、多くは業績不振の状況を立て直す事等をコミットすると言う事かと思います。分かりやすい例でいえば、経営トップ自らが不祥事を起こした場合には辞任という経営責任の取り方が社内外とも納得感があります。もっとも社員としては納得感というよりは頭に来たという感情の方が強いでしょうね。


 一方で組織的な不正が起きた、業績不振が続いているなどの場合は対応が分かれると思います。まだ就任1年目の方が、具体的な業績回復施策と共に過去のしがらみを断ち切って頑張りますと力強く説明してくれれば信じようかなという気にもなるかもしれません。一方で長年同じような経営方針で同じような説明を決算説明会の場で行い、私の経営責任は来期の黒字浮上を実現する事ですと言われるともう結構ですという気になります。

 

責任を語る人によっても印象が違う


 社員目線でも社内で人望のある方が説明するのと、あまり人望はないが過去の実績等で経営トップに選ばれた方が説明するのとでは、印象がまるで違います。業績不振や不祥事の責任をとって辞めるにしても、退職慰労金を満額受け取って辞める場合には特に社員からしたら本当に経営責任をとったのかという気になります。


 おかしくなった会社を全社一丸となって立て直して再び輝く存在にする、その目的のために当事者である経営トップがどのような行動をとるべきなのか、社員、顧客、取引先、株主の誰もが納得するような責任の取り方を決めるのは簡単な決定ではないようです。

 

誰に対して責任を負っているのか


 コーポレートガバナンスコードの基本原則に、株主の権利を守るのは前提として経営者は企業の中長期的成長と企業価値の創出は従業員、顧客をはじめとする様々なステークホルダーのリソースの提供と貢献の結果であり、これらステークホルダーとの適切な協働に努めるべしとあります。冒頭の「社員の雇用を守る事が経営責任・・・」というフレーズに違和感を感じたのは、どうやら株主、顧客、取引先他のステークホルダーへの責任はどうなるんですかという反応だったようです。


 残念ながら今後も経営トップが自らの責任について説明する場面は今後も何度も目にしそうです。そのような場面を目にする際、経営者が株主から委託されて経営に従事している以上、株主への責任は当然として、それ以外のステークホルダーへの責任を十分果たしていると言えるのか、今後も注視したいと思います。

 


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