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執筆者の写真鎌倉 俊太郎

下請法をきっかけとして取引のあり方について考える


下請法

下請法とは?


 いきなりあまり聞きなれない法律で恐縮ですが、皆様は日本で下請法(正確には下請代金支払遅延等防止法)と呼ばれる取引先、特に大企業との取引で立場の弱い中小企業を保護する趣旨で制定された法律の存在をご存じでしょうか?


 タイでは日本の下請法に該当する取引先保護の法律はないようですが、ILO(国際労働機関)の取り組みに積極的に参加して政府として健全な商取引を推進しています 。欧米先進国でも下請法に該当する法律がない国もありますが、これは日本で会社数の99%以上が中小企業という社会構造もあるので、各国の事情に応じた対応になっているのが実情だと考えられます。


 日本で下請法が制定されたのは1956年と比較的古いのですが、実効性にとぼしかったこともあり近年公正取引委員会でも中小事業者との取引推進のアクションプランを公表するなど、この法律に改めてハイライトがあたっています。


 製造、流通、サービス、金融、インフラに至るまで、自社内ですべての製品やサービスを原材料調達から最終製品サービスの提供まで完結する企業は存在せず、すべての企業と自社以外の企業と何らかの取引を行って事業を営んでいます。その意味ですべての企業にとって重要な法律であり、ここで簡単に下請法の内容をおさらいした上で企業間の取引の課題について考えてみたいと思います。


下請法の内容と近年の運用状況


 下請法は、(1)製造委託、(2)修理委託、(3)情報成果物作成委託、(4)役務提供委託、の4取引に適用されるため、幅広い業種業態がその対象になります。委託元企業が資本金3億円超で委託先企業の資本金が3億円未満の場合、委託元企業の資本金が3億円以下1千万円超で委託先企業の資本金が1千万円以下の場合(いずれも個人事業主含む)に同法が適用されます。


 具体的には、委託元企業は委託内容を文書として作成し、当該文章を委託先に交付の上保存する義務を負います。また、委託元には、納品受領拒否、支払遅延、減額、返品、買いたたき等11の行為が禁止されます。違反した場合には、公正取引委員会が委託元を検査の上企業名の公表、改善指導を行い、悪質な場合は罰金も科されます。


 公正取引委員会の発表によると、令和3年は指導件数が7,992件、その内勧告件数は4件となっており、ここ数年では増えたり減ったりという状況のようです。やはりその時々の経済状況に左右されるのが現実のようです。


法律も大事だが、それ以上に意識改革が必要


 ここまで固い法律の内容を紹介してきましたが、そもそも取引って一方に不利な条件でいいのでしょうか?特に日本ではお客様は神様という発想が根強く、個人企業間だけでなく企業間でも購買側は無理を言い、販売側がやむなく受け入れるという構図になりがちです。特に購買側が大企業だとなおさらその傾向が強いように感じます。


 企業社会全体で購買側が上というような意識が強いといくら法律を制定してもなかなか状況は変わりません。きれい事に聞こえるかもしれませんが、販売側が付加価値のある製品やサービスを提供し、購買側が品質と価格がマッチする条件で適正に購買をするという意識を双方が持たなければ社会全体で成長していかないと強く感じています。


 もちろん購買側だけの意識改革では片手落ちで、販売側も既存の取引先に固執しないで広く世界に適正な条件での取引をしてくれる相手を求める、相手の言い分をそのまま聞くのではなく課題解決型のコンサルティング営業をする等の努力が必要と考えます。


売り方を工夫しよう


 同じような製品やサービスを売るにしても、他社より高く売っている企業は確実に存在します。違いは売り方だと思います。付加価値は値段の安さだけ。。というやり方ではいつか無理が来ます。


 新製品の開発と品質の向上に不断の企業努力が求められ続ける現実もあるのですが、企業の努力をもっと顧客の潜在ニーズもとらえた新しい売り方を工夫する方に向けるべきだと思います。購買する側も気がついていない企業の課題は必ず存在します。仮説を立てて積極的な課題解決型の提案をすることで、価格競争に巻き込まれない販売活動ができると考えています。


【免責事項】

本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。


 

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