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執筆者の写真倉地 準之輔

タイの源泉徴収税について知っておいた方がよい3つのポイント


タイの個人所得税について知っておいた方がよい3つのポイント

タイの源泉徴収税(WHT)とは


 源泉徴収税(Withholding Tax、WHT)は、所得が発生する際にその支払い元があらかじめ税金を差し引いて納税する制度です。タイでは、この制度が広く適用されており、歳入法典に基づいて様々な支払いに対して源泉徴収税が課されます。


 外国企業や個人がタイでビジネスを行う際には、この源泉徴収税について理解しておくことが重要です。そこで本稿ではタイの源泉徴収税について知っておいた方がよい3つのポイントについて解説します。


1.適用範囲と税率


 タイの源泉徴収税は、多岐にわたる支払いに対して適用されます。例えば、タイ国内での法人によるサービス提供に対して支払われる金額には3%の源泉徴収税が課されます。さらに、広告費用については2%、配当については10%の源泉徴収税が一般的に課されます。


 一方で、タイ国外に支払いを行う場合、各種の租税条約により、この税率が軽減される場合があります。また、25%以上の議決権株式を保有する株主への配当や、BOI事業を営む会社からの一定の配当については配当支払い時の源泉徴収が不要とされています。


 このように源泉徴収税の適用税率は取引の内容、払う側の法人の属性、受け側の法人の属性によって変化します。適切に源泉徴収を行わなかった場合、税務当局から罰則や追加税が課されるリスクがあります。したがって、企業は各種の支払いに対する適用税率を正確に把握し、適切な税額を源泉徴収することが求められます。


2.ロイヤリティに関する実務上の混迷


 日本企業が在タイ関連会社と実施する様々な取引の中で、日本企業が在タイ関連会社から徴収するロイヤリティについては15%の源泉徴収税を徴収する旨が定められています。ここで、ロイヤリティとはつまるところ知的財産の使用に対する対価であり、本来であればこのロイヤリティに該当しないのであれば源泉徴収は不要であるはずです。


 一方、タイにおいては広く技術やITに関連する支払いをロイヤリティとみなして課税を行う実務が見られ、例えば一般的な技術支援の役務提供への対価の支払いであっても、これをロイヤリティとみなして源泉徴収を要請されたりする可能性があります。さらに厄介なのは、こういった指摘を懸念する社内の経理担当者や会計事務所が、技術やITに関する支払いをなんでも15%の源泉徴収の対象として処理する傾向がみられることです。


 このため、経理担当者や会計事務所に対応を任せきりにするのではなく、会社として、何をロイヤリティとして源泉徴収の対象にするかについては、ポリシーを決めて対応する必要があります。


3.サービスか、製造か


 前述の通り、タイ国内での法人によるサービス提供に対して支払われる金額には3%の源泉徴収税が課されます。一方で、製造された物品の対価として支払われる金額には源泉徴収税は課されません。ここで、タイの一部の企業で、『製造された物品の対価に対して3%の源泉徴収税を控除して支払う』という実務が見られます。これは誤りなのですが、現場レベルで製造による販売なのか、請負加工というサービスの提供なのかに関する混乱が生じ、支払い側で源泉税を懈怠した場合のリスク(前述の通り罰金が科される可能性があります)を懸念した結果、とりあえず源泉徴収をしてしまう、という背景があるようです。


 この点、売り元がタイ株主が過半数を有する会社ならば、法律上もサービスを提供することに問題はない一方、仮にそうでない場合や、BOI企業として製造業を営む企業として認可されている場合、サービスをしてはいけない会社なのにサービスを提供しているという外形を有する(製造なら、対価に源泉徴収は不要なはず)ことになり、法律違反を疑われるリスクも伴います。自社で、自社の事業の定義の内容を明確にしたうえで、本来なされるべきではない源泉徴収がなされた場合は、毅然と対応することが必要です。


どうすればよいのか?


 タイの源泉徴収税に対する理解を深め、適切に対応するためには、以下のステップを踏むことが推奨されます。


  1. 専門家の相談:タイの税務に詳しい専門家に相談し、適用される税率や租税条約の内容を確認することが重要です。専門家は、企業の具体的な状況に応じたアドバイスを提供し、適切な税務対策を提案してくれます。

  2. 定期的なレビュー:ビジネス取引に関連する源泉徴収税の適用範囲や税率を定期的に見直し、最新の法規制に対応することが重要です。法規制は時折変更されるため、最新情報を常に把握し、適切に対応することが求められます。

  3. 適切な書類の管理:源泉徴収税の納税証明書や関連書類を適切に保管し、税務コンプライアンスおよび貴社の対応に関する説明資料を確保することが重要です。書類の適切な管理は、将来的な税務調査の際に役立ちます。


 以上のポイントを押さえることで、タイでのビジネスにおける源泉徴収税に関するリスクを軽減し、法令遵守を確実に行うことができます。企業は、タイの税務制度を正しく理解し、適切な対応を行うことで、国際的なビジネス活動を円滑に進めることができるでしょう。本稿が皆様がタイでビジネスをする上での一助となれば幸いです。


【免責事項】

本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。


 
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