タイの有形固定資産とは
タイにおいて有形固定資産とは、製品やサービスの製造又は供給、他者への賃貸、業務管理のために使用することを目的とする有形の品目であり、一報告年度を超えて使用する見込みであるものをいいます。
例えば製造業において生産に使用される機械設備や、サービス業でサービス提供に使用されるにおけるデスクトップPCは有形固定資産であり、ほとんどすべての会社に関連する重要な項目と言えます。そこで本稿では、タイの固定資産管理において知っておきたい3つのポイントについて解説します。
1. 減価償却期間は通常5年でシンプル、ただし、開始タイミングに注意
タイにおいて有形固定資産の減価償却期間は、多くの資産において5年間とされています[1]。これは、資産区分ごとに詳細が定められている日本に比べて非常にシンプルであり、そういった意味では管理が容易であるといえます。
他方、減価償却の開始タイミングについては、例えば当該資産が、マネジメントが予期した条件で稼働することができるために必要な場所と状況におかれた時点のように、当該資産が利用できる状況になった時点で開始されるとされており、『資産は利用できる状況にあるが、実際には使っていなかった』期間についても減価償却の計算が必要ということになり、日本でいう事業の用に供した日より早いタイミングから減価償却が発生することになりますので、留意が必要です。
2. 理論上は、金額の多寡によらず有形固定資産になる
有形固定資産の定義からもわかる通り、タイでは一報告年度を超えて使用する見込みである有形の品目については例えばその金額が非常に小さかったとしても、理論上はその品目を有形固定資産として認識して管理する必要があります。この点、日本では金額の小さい有形固定資産について一括費用としたり、簡便な方法での償却が認められているのと異なります。
ただし、実務上では、さすがにすべてのこういった品目について有形固定資産として管理するのは難儀であることから、企業が一定の基準(数千バーツ程度が多い印象)を設けて、ある一定金額以上の資産のみを有形固定資産として登録することが一般的です。こういった有形固定資産とする金額の下限については社内ルールとして明確にし、重要な資産の管理が漏れることを防ぎつつ、管理の効率化を図ることが求められます。
3. エクセルで管理する場合はエラーに注意
自社で使用している会計システムが有形固定資産の管理モジュールを有していない場合など、タイにおいては有形固定資産の管理をエクセルで行うことがしばしばみられます。しかし、エクセルは便利である反面、人的エラーが発生しやすいという問題があります。特に大量のデータを手入力で管理する場合、入力ミスや計算式の設定ミスなどが起こりやすく、結果として財務報告に不備が生じる可能性があります。
さらに、定期的なバックアップを取らなかった場合、データが消失したり、ファイルが破損した場合に修復が難しくなるリスクもあります。そのため、エクセルを使う場合は、データ入力のチェック体制を整えるとともに、可能であれば専用の管理ソフトウェアを導入することで、エラーやリスクを軽減することが推奨されます。
まとめ
タイの有形固定資産はほぼすべての企業に関連し、その運営において重要な役割を果たします。償却期間のシンプルさ及びその償却開始タイミング、資産管理とするうえでの基準設定の自由度、そしてエクセルでの管理のリスクを理解することで、企業は効率的かつ正確な資産管理を実現することができます。本稿が、タイでのビジネスに取り組む皆様のお役に立てれば幸いです。
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