タイにおける従業員の試用期間中の解雇について
タイにおける従業員の解雇に関する相談で、最も多い質問は試用期間中の従業員を解雇する場合の取り扱いです。特に、試用期間中の本採用見送りのタイミングやそれに伴う手続き、解雇補償金の支払い可否が挙げられます。ここでは基本的な考え方とその対応について記述します。
試用期間(Probationary period)の長さ
タイにおけるの試用期間制度はヨーロッパの考え方から来ていると言われており、タイ労働者保護法は法的な定めはなく、各企業で試用期間を設定する権利があり、会社と従業員との合意によって決められます。また、試用期間をさらに延長する場合がありますが、解雇補償金の適用条件に合わせて、90~119日間の設定が一般的です。
試用期間中の本採用を見送るタイミング
試用期間の評価が芳しくなく、本採用を見送るまたは雇用契約終了が決定となった場合、解雇補償金の支払い時期を鑑み、早めに書面で本採用の不合格を当該従業員に通知することが基本です。事前通知は、遅くても、最終1賃金支払期間前までに実施しなければなりません。
例えば、賃金支払い日は月末とし、試用期間の終了日を11月22日にした場合
試用期間終了前の最終賃金支払日:10月31日
事前通知最終日(最終1賃金支払期間前):9月30日
もし事前通知の遅延により当該従業員の勤続期間が120日を超えた場合、会社は解雇補償金の支払い義務が生じます。
雇用契約終了の通知
労働者保護法第119条に定める罪(重大な過失や不正により会社に多大な損害を与えた等)を犯した場合を除き、会社は、労働者保護法第17条第2項および第4項に従って、試用期間の終了を事前に書面にて通知しなければならず、事前通知しない場合は通知に代えて賃金を支払わなければなりません。タイでは事前通知に代わる補償金のことを「ショック代償/ค่าตกใจ」と表現します。
解雇通知書の作成
試用期間の終了を通知するときに作成する解雇通知書には、本採用不合格の理由、解雇日等の他に、解雇補償金が生じる場合、当該従業員の最終月の日割賃金や補償金の詳細を記載しなければなりません。解雇される従業員は、解雇通知書を提示された後、退職願を提出する必要はありません。
雇用契約終了のポイントとして、その終了が不正解雇に判定されないよう、従業員に対する評価制度を導入し、人事部と上司が少なくとも 2 回の適性評価の実施をお勧めします。
例えば、
一次評価:入社日から45日または60日に、業務遂行能力や適合性等の評価。
二次評価:雇用契約を解除するかを慎重に検討する時間を確保するために、試用期間終了の30日前までに、適合性や将来性等の総合的な評価。
まとめ
1. 試用期間中の従業員を解雇する場合、本採用の従業員解雇と同じ対応が必要です。
2. 採用する従業員の適合性を正しく評価し、試用期間を管理することにより、不当解雇の訴訟や解雇補償金の支払いを回避することができます。
3. 会社が試用期間中の従業員を即解雇と判断した場合、事前通知に代えて最終賃金の30日分を支払うことになります。
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