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執筆者の写真鎌倉 俊太郎

資本効率を意識した経営について


DX人材育成の必要性

日本企業の2024年3月期決算内容を見て


 日本企業の2024年度3月期決算も開示され、為替リスク、地政学リスク、国内人口減少、世界的な景気の先行き不透明感のあった経営環境ながら全上場企業の純利益総額は3年連続で過去最高を更新しました。


 何社かの決算説明資料を見ていると、ROE(Return on Equity;自己資本利益率)、ROA(Return on Asset:総資本利益率)等、資本効率を意識した目標設定と経営施策の説明を行う企業がここ数年でずいぶん増えてきた印象を持ちました。


 そこで今回はなぜ資本効率を意識した目標設定と開示が増えているのか、その意味するところは何のか、ご一緒に考えてみたいと思います。

 

ROE、ROAの意味と経緯


 ROEは純利益を自己資本で、ROAは純利益を総資産(負債+資本)で除して算出します。分子はP/L(損益計算書)の下の方に、分母はやはり貸借対照表の下の方に合計値として記載されており、算出が容易な数字です。基本的な考え方は、企業が調達した資金を使って利益を稼ぎ出しているかどうか、同業他社や過去の実績値等と比較して判断する目安となるものです。


 ただ企業は分母の自己資本、総資産をすべて分子の純利益向上のために使っているかと言うと必ずしもそうとは言えず、有休資産を購入したりしています。政策保有株式、いわゆる持ち合い株式やゴルフ会員権はその典型です。


 従来日本では企業の成長性や収益性は損益計算書で、財務安全性は貸借対照表の数字を使って個別に判断する傾向が強かったのですが、両財務諸表の主要な数字を用いた指標を使うことで経営効率を判断しようとの風潮が2014年に公表された通称伊藤レポートをきっかけに経営者サイド、投資家サイドの双方に広まりました。


 当コラムでも何度かご紹介している同レポートでは、ROE8%を越える企業では持続的な成長が認められ、業種を問わず経営者はこの数字を最低限の目標とすべきと提言しました。この提言は今まで売上、利益の額が伸び率等の損益計算書中心の経営から、資本効率を意識した経営への転換が求められることになったきっかけにもなりました。ROEやROAはその代表的な指標といえます。

 

なぜ経営者は資本効率を意識した経営を求められるのか?


 従来なぜ日本企業の経営者は資本効率をあまり意識する必要がなかったかと言えば、資金調達の手段が主に間接金融、すなわち銀行からの借入金中心だった点、株主も相互に株式を持ち合ってお互いうるさい事は言わない暗黙の了解があった点、などがその理由として上げられています。


 もちろんそれらも背景として主要な要因だったとは思いますが、一番大きな要因は株主の中身が変わってきた点、つまり自分のお金を投資してその対価として適切なリターンを明示的に求める海外投資家が株主として大きなウエイトをしめるようになってきた点、バブル崩壊後20年以上停滞している日本経済の閉塞感に政府、企業も危機感を持ち始め、海外投資家の主張に耳を傾ける雰囲気になってきた点が大きいと考えています。


 海外投資家の要求も従来言われていたように短期的な配当や株価の上昇を求めるものばかりではなく、むしろ持続的な成長を実現する過程で企業価値向上の産物としてのリターンを要求するケースが増えてきています。

 

今が転換点


 とはいえ、日本企業はまだまだ新卒一括採用、終身雇用、年功序列の色彩が強く、経営者もプロパーの方が多いのでいきなり株主の要求が変わったからと言ってそう簡単に方向転換するのは難しいのが現実です。


 経営者が先頭に立って全社で資本効率を意識した経営にシフトし、株主をはじめとしたステークホルダーの要求に応えて永続的に企業価値の向上を目指せるのか、それとも変われきれずに失われた30年の状況に戻るのか、ここ数年が正念場と考えています。


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