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執筆者の写真鎌倉 俊太郎

同意なき買収提案


企業買収 M&A

同意なき買収が増えそう

 

 同意なき買収への抵抗感が下がってきたのか、昨年ニデックが工作機械メーカーのTAKISAWAへ同意なき買収提案を行い、当初はTAKISAWA側も反発したものの最終的にはニデックの提案を受け入れ、同社はニデックグループ入りをして上場を廃止しました。


 一方プリンター業界では2024年5月に大手のブラザー工業が産業印刷のローランドDGに同意なき買収提案を行ったものの、ローランドDG側はファンドと組んでMBO、Management Buy Outの道を選びました。


 従来同意なき買収は敵対的買収とも呼ばれ、日本ではどちらかというと忌み嫌われる行為であり、買収提案を行った側が悪しざまに言われるケースが多かったのですが、昨年から風向きが変わってきた印象があります。そこで今回は同意なき買収について考えてみたいと思います。

 

経済産業省の指針


 2023年8月、経済産業省は買収行為に関して一つの指針を公表しました。企業行動における行動指針という題で、要は現経営陣が同意していない買収提案を受けたとしても感情的に拒絶するのではなく、取締役会にも図ってその提案内容が企業価値向上に資するかどうか検討し、透明性をもって合理的な判断を求めるというものです。


 同意なき買収というと、“会社を乗っ取る”、“従業員の雇用は一切保証されない”、“(外国企業によって)重要な技術情報が盗まれる”といった反発の声がすぐに上がりがちでしたが、内実は現経営陣の保身のために抵抗するという内容も少なくなかったと思われます。経済産業省が公表したこの指針は、昨年春JPXが出した資本効率を意識した経営の要請に続いて企業価値向上を高める合理的な行動をとるよう、経営者に促した内容となっています。

 

提案内容が企業価値向上に資するか合理的な判断をせよとは


 提案内容が企業価値向上に資するかどうかを合理的に判断するというと堅苦しいですが、要は買収提案者が買収した方が長期的に企業価値が上がるかどうか考えてということです。(上場企業の場合。非上場の場合でも基本的な考え方は同じです。)


 買収者も現時点の経営陣の経営方針に飽き足らず、企業価値向上のためにもっといい経営施策があると考えたので買収提案するわけです。現経営陣が買収提案に応じないのであれば提案内容の問題点、現経営方針の妥当性を改めてアピールすればいい訳で、敵対的だからとか、乗っ取りだとか言うのは本来的外れな主張だったわけです。


 そのため、経済産業省の指針では買収提案の検討過程に関して透明性も担保するよう、念をおしています。株主としてはじっくりどちらの主張が望ましいのか考えて判断すればいいことになります。

 

今後の傾向


 業績や株価がなかなか上がらない原因はいろいろあれど、社長を筆頭とした経営陣に大きな責任がある点は事実だと思います。ところが万年低成長、低株価の企業は果たしてこの事実に今まで真剣に向き合ってきたと言えるでしょうか?後継社長を選ぶ際に広く最適な人材を選別するプロセスを経ることなく、先輩から後輩へのバトンを順繰りに渡すように代替わりをすすめてこなかったでしょうか?経済産業省の指針にはこのような問題提起も内在しているように感じます。


 今後、日本企業が国際競争力を高めて株主の期待に応えていくには業種業態を問わず会社や一部事業の買収や売却といった手段はより重要な経営施策となることは間違いなく、今後も同意なき買収とよばれるケースが増えていく事となるでしょう。ある日。自分の勤めている会社が突然同意なき買収を提案され、その日を境に諸々の対応に追われる日々が始まるなどという事態もそれほど珍しいことではなくなるかもしれません。


【免責事項】

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