親会社への利益の還流

コラム執筆者 Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd. 片瀬さん
Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd.
President Yohei Katase
【プロフィール】
日本の大手税理士法人にてそのキャリアをスタートさせる。日本国内の税務業務を経験した後、その活動のフィールドを海外に移す。アセアン各国の税務及び日本の国際税務を専門とし、国際税務関連の書籍の執筆も多数行っている。2012年からは、現地でのコンサル会社の立上げのために単身でメキシコに渡り、日系企業(自動車関連)の進出から進出後の会計税務、人事労務までをワンストップでサポート。メキシコから帰国後は、アセアン各国を自身のフィールドとし、2016年7月からタイのバンコクにてBridge Note(Thailand)Co.,Ltdの代表者として活動中。

親会社への利益の還流

皆様こんにちは、Bridge Note (Thailand) Co.,Ltd. の片瀬です。

今日のコラムは「親会社への利益の還流」についてお話します。

個人的には、日本親会社の法人税率が実効税率ベースで約30%であり、タイの法人税率は20%であることを考えると日本親会社に利益を還流する意味はあまりないと思っています(ROEやROAを上昇させたいならタイ国内留保、企業グループの連結実効税率を下げたいのであればタイ国内留保)。

ただし、日系企業の中には、ファイナンス機能を日本本社にしか持っていない会社も多く、新たな国への投資のためや、在外子会社の設備投資への資金供給などのために日本本社に資金を集めなければならないこともあります

日本親会社への利益の還流方法として取れる方法はそこまで多くはありません。具体的には、以下の3つしかありません。
※念のためにそれぞれの方法でタイから日本に還流した場合の源泉税率を記載しておきます。

【利益還流方法】

①配当により還流      ⇒10%
②利息により還流      ⇒15%(金融機関の場合は10%)
③取引(棚卸・役務取引に分類可)により還流       ⇒ロイヤルティ15%

配当による還流は、「課税済利益の還流」であり、既にタイ国内においてタイの法人所得税が課税されています。
利息による還流と取引による還流は、「課税前利益の還流」であり、タイの課税対象となる所得金額を減少する効果があります

【配当により還流する場合】

配当での還流は「課税済利益の還流」であり、タイ子会社から日本親会社への支払いの際に10%の源泉税が課税されます。

日本本社側では「外国子会社配当益金不算入制度」の適用となり、「課税済利益の還流」であるために日本で益金(益金とは、「税務上の収益」をいう。対義語は「損金」)計上する必要はありません。この配当に係る源泉税の取扱いは「外国税額控除の対象」とならず、「損金算入」もなされません。

※この部分は2015年に日本側で税制改正があり、経過措置を経た2018年4月1日より開始する事業年度から下記の通り取り扱うこととなります(配当が海外で課税されない場合には、日本において課税しましょうという改正)。

<2015年税制改正>
①海外の法令において配当額の損金算入するものとされている場合には、その配当額における日本の取扱いは「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外(海外:損金算入、日本:益金参入)
②海外において配当額の一部損金算入がなされた場合には、一定の要件の下、その損金算入額に対応する配当額については「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外とすることも可能
③これらの場合(①及び②の場合)において、「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外とされた配当に係る源泉税については、外国税額控除又は損金経理をすることが可能

【利息により還流する場合】

利息での還流は「課税前利益の還流」であり、タイ子会社から日本親会社への支払いの際に15%(金融機関の場合は10%)の源泉税が課税されます。

課税前利益の還流」であるために、タイ子会社側で「損金へと算入」することが可能であり、日本親会社側では「益金へと算入」する必要があります。既に支払っている源泉税について、二重課税を排除するため(利息は日本親会社側で「益金へと算入」され課税されるため)に、日本において「外国税額控除」の規定の適用を受けることができます。

なお、タイにおいて「過少資本税制(「資本金」と「借入金」、資金を調達するという意味では同じ性格ですが、利益の還流にあっては「配当」と「利息」と、その還流方法は異なります。配当は「課税済利益の還流」であるためにタイにおいて法人税が課されますが、利息は「課税前利益の還流」でありタイの法人税額を減少させる効果があります。過少資本税制とは、有利な利息での還流を制限する法律。ただし、タイには存在しない)」の適用はありませんので、利息は全額「損金へと算入」することができます。

【取引によって還流する場合】

取引での還流は「課税前利益の還流」であり、その内容は更に3つに分類することができます。

①棚卸資産の取引価格による還流
②役務提供(事業所得)の取引価格による還流
③使用料の取引価格による還流

この中で源泉税が課されるものは③の使用料(ロイヤルティ)の取引価格による還流だけであり、その源泉税率は15%です。それ以外の取引では源泉税が必要ありません。

既に支払っている(使用料の)源泉税については、二重課税を排除するため(使用料は日本親会社側で「益金へと算入」され課税されるため)に、日本において「外国税額控除」の規定の適用を受けることができます。ちなみに源泉税を支払わない①と②の取引に関しては、当然ながら「外国税額控除」の適用はありません。

また、「役務提供(事業所得)」と「使用料」の違いは、無形資産などの権利、技術やノウハウが他方(親会社から子会社)へ移転しているかによって判断されます。こちらは判断が難しいところなので個別に確認が必要になります(親会社へのロイヤルティ)。

取引によって還流する場合には、VAT(付加価値税)にも注意が必要です。棚卸資産取引であれば輸出免税の規定の適用を受けることができますが、役務提供の場合には「役務提供地」及び「役務の輸入にかかるリバースチャージ課税(自己申告)」にも留意しなければなりません。こちらも難しいところなので個別に確認が必要になります(サービスの輸入に係るVAT申告(自己申告))。

そして、取引価格によって日本本社に利益を還流する場合には「移転価格税制」にも注意する必要があります。

移転価格税制とは親会社と子会社の間の取引価格が独立企業間価格(資本関係のない第三者との取引価格)によって行われているかを確認するための税制です。
タイにおいては、2018年にも大きく改正されるといわれています(2017年6月21日に「移転価格税制改正案の骨子」が改めて修正され、少しずつタイの移転価格税制の内容が明らかになってきています)。
こちらも難しいところなので個別に確認が必要になります(移転価格税制の改正骨子)。

このように利益の還流は3種類の方法しかありませんが、関連する規定は多岐に上ります。

日本本社にキャッシュを集めたい思惑は日系企業であれば誰しもが持つものですが、予期せぬ税務リスクに見舞われることが多く注意が必要なところとなります。

また、個人的には日本に還流するのではなく、タイの子会社を中間持株会社化して、金融活動はタイで行った方が実効税率や連結ROEやROAの観点から良いかと思っています。

その他、タイに金融機能を持たせてIHQの優遇規定(税率が20%→10%へ等の各種優遇がある)を利用する会社も少しずつ増えてきていますが、タイで優遇規定を利用すると日本でタックスヘイブン税制の適用対象になってしまったり(優遇税制(IHQ)に潜む闇 http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/17645043.html)と国際税務は各国間の規定に齟齬が起きやすい部分でもあるので注意してください。
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