電子帳簿保存制度とは?日本での今後の方向性を整理

電子帳簿保存制度とは?日本での今後の方向性を整理

タイではタックス・インボイスの電子化制度が2018年度より施行されています。日本でも税務関係の業務や経理に必要な帳簿や書類などの保存を、電子データで行うこと認める法律が今年1月に新たに改正されています。国際的な潮流でもある電子化対応について、日本の制度の概略と今後の方向性を整理しました。


昨年末から、ビジネス関係のメディアで日本国内で改正電子帳簿保存制度が2022年1月から施行されるとのニュースを目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。この制度は2015年に導入されましたが、税務署への事前届け出が必要、電子保存データの要件が複雑かつ厳しい等の理由でなかなか普及してきませんでした。

今回の改正では、事前届け出が不要になり、また電子データの保存要件が緩和される等、日本政府としてもデジタル領域での欧米へのキャッチアップ、生産性向上等を目指したDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の文脈で利用促進に思いっきりかじを切った印象があります。

一方で義務や罰則等も強化され、対応が間に合わない企業からの反発が強く、導入直前になって2年間に猶予措置を設けざるをえなくなったドタバタも生じました。国際的な潮流でもある電子帳簿保存制度に対応についてこの機会に日本の制度を概略理解して今後の方向性について考えてみたいと思います。


対象となる電子データの3分類及びアメとムチ

改正電子帳簿保存制度が対象とする電子データは3分類されています。電子帳簿(総勘定元帳、現金出納帳等、会計システムを通じて作成される帳簿類)、取引先から受領したり自社で作成した紙をスキャナで保存したデータ、及び電子取引データ(EDI、メール等での取引データ)の3つです。

この内、電子帳簿、取引先から受領したり自社で作成した紙をスキャナーで保存したデータの2分類に関しては検索条件の緩和(日付、取引金額、取引先名のみで検索出来ればよしとする)、要件を充足したクラウドサービスの会計システムを利用する場合にはタイムスタンプも不要にする等の要件の緩和が行われたので経理現場の負担が軽減されることが期待されます。

一方3つ目の電子取引データは従来は紙での出力保存が認められていたのが今改正ではタイムスタンプを付しての電子保存が義務付けられたので、処理方法の変更に伴う混乱が現場で生じるかもしれません。

さらに事前届け出を不要にした一方で税務処理上の不備、特に隠ぺいや偽装による申告漏れが発覚した場合には重加算税が10%加重になるという、罰則も強化されています。言い方は悪いですが、要件緩和というアメと重加算税の加重というムチがセットになった制度改正と言えそうです。

電子帳簿保存制度をきっかけとして

前述したように今回の改正はやや拙速に実施されたために今年の1月から施行されたものの2年間の猶予期間が設けられています。確かに業務プロセスの見直しや新しい会計システムの導入等、時間があまりない中で特に人員の限られた中小企業では対応は大変なのは分かりますが、一方で長年紙文化に染まった実務の現場を社会全体で変えていく、いいきっかけにもなると考えることができるかもしれません。

費用や人員を理由になかなかシステム更新の投資にOKを出さなかった経営者にも、法改正を理由に投資の決断を促す効果もあると思います。2年間の猶予期間内に、法改正対応のみでよしとするのではなく、他領域も視野に入れたDXへの関心が一層高まることを期待したいと思います。

今回コラムを執筆頂いた方のプロフィール

鎌倉 俊太郎 (ペンネーム)

某大手コンサルティングファーム 監査役

日本公認会計士。慶応義塾大学卒。大手ITベンダー、コンサルティングファームにて、IT、会計分野における企業のコンサルティングに多数従事。(ご本人の希望により、仮名で記載しております。ご了承ください。)
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