移転価格税制の改正骨子

コラム執筆者 Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd. 片瀬さん
Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd.
President Yohei Katase
【プロフィール】
日本の大手税理士法人にてそのキャリアをスタートさせる。日本国内の税務業務を経験した後、その活動のフィールドを海外に移す。アセアン各国の税務及び日本の国際税務を専門とし、国際税務関連の書籍の執筆も多数行っている。2012年からは、現地でのコンサル会社の立上げのために単身でメキシコに渡り、日系企業(自動車関連)の進出から進出後の会計税務、人事労務までをワンストップでサポート。メキシコから帰国後は、アセアン各国を自身のフィールドとし、2016年7月からタイのバンコクにてBridge Note(Thailand)Co.,Ltdの代表者として活動中。

移転価格税制の改正骨子

皆様こんにちは、Bridge Note (Thailand) Co.,Ltd. の片瀬です。
以前、「タイにおける移転価格税制考察」を書きました。

タイにおける移転価格税制の改正は2018年にも行われると言われています(下記の通り、既に改正の骨子は公表されています)。

今日は、以前のコラムではお伝えしていなかった“タイの移転価格税制の改正骨子”についてお話します。

このタイの移転価格税制の改正骨子は2015年5月に首相府より公表されました。
当初は2016年後半には施行されると言われていましたが、現在(2017年7月現在)においても施行はされていません(2017年6月21日に歳入局HPに修正法案の掲載あり)

これはOECD(経済協力開発機構)のBEPS PROJECT(利益移転・税源浸食を防止する取り組み)の最終報告書(全世界統一のルールとする方針・フレームワーク)が2015年10月に提出されたためであると考えられ、現在はこの最終報告書や各国の移転価格税制規定(最終報告書を基に法定された各国の移転価格税制規定)との整合を取る形で最終の調整がなされているものと考えられます。

移転価格税制の改正骨子には次のように記載されています。

「移転価格税制の適用対象法人は、一定の文書(企業グループ、関連会社間取引における収益と費用の算定方法を含んだもの)を事業年度末日から150日以内に歳入局に提出しなければならない。期限内提出ができない場合には40万バーツ20万バーツ(2017年6月21日に歳入局HPに掲載された修正法案において20万バーツへ減額、以下同じ)以下の罰金。」

この文章のポイントは、次のとおりです。
①適用対象法人
②一定の文書
③事業年度末日から150日以内
④提出しなければならない
⑤罰金40万バーツ20万バーツ

①の「適用対象法人」は2017年7月現在において不明ですが、おそらく各国同様に一定の金額基準ができるものと考えられます。例えば「関連会社間取引の受払合計額が5億バーツ以上である場合には移転価格ドキュメンテーション(ローカルファイル)を作成しなければならない」など。
その他注意すべきポイントとしては、金額以外の基準があるか(例えば、赤字企業は必ず一定の書類を提出しなければならない、タイに比べて所得税率が低い国の関連会社と取引を行っている場合にはドキュメンテーションが必要など)です。

金額基準がいくらになるか?金額以外の基準があるか?この2点に注意してください。

②の「一定の文書」は、BEPS PROJECTの最終報告書に記載されている三層構造のドキュメンテーションが必要とされることになるでしょう。

具体的には、マスターファイル、ローカルファイル、CbCレポートの作成が要求されることになります。マスターファイルには企業の概況情報を記載し、ローカルファイルには関係会社間取引の利益率が適正であるかの検証を記載し、CbCレポートには関連会社各社の定量情報及び遂行する機能などを記載(チェック)します。

タイ以外の各国のドキュメントとの整合を取るようにしっかりと移転価格ポリシーに則ったドキュメントを作成してください。

※①の適用対象法人の判定のための金額基準は各国独自のものであり、各国間で問題が起きてしまっていることや、②の三層構造のドキュメンテーションが諸外国と同様に必要となることは、以前のコラム「タイにおける移転価格税制考察」でお伝えした通りです。

③の「事業年度末日から150日以内」は、確定申告期限と同じです。今後、適用対象法人は、事業年度末日から150日以内に「確定申告書」、「監査済財務諸表」、「課税所得金額と納税額の計算証明」、「マスターファイル・ローカルファイル」「一定の書類」(2017年6月21日に歳入局HPに掲載された修正法案において、提出すべき書類は以下の通り定められています)を提出しなければならなくなります。
確定申告年度と同様の年度がマスターファイル・ローカルファイルの適用対象年度となると考えられますので、マスターファイル・ローカルファイルの作成のため数字の締めを早めなければなりません。

初年度の移転価格ドキュメントの作成に60日ぐらいの期間を要することを考えると、決算の数字は90日程度で締めることを想定してスケジュールを立てることが必要です。

【一定の書類について(2017年6月現在)】
国外関連者との取引があり、関連会社間取引金額が一定の金額(まだ公表されていない)を超える法人は、歳入局長が定める一定の様式(まだ公表されていない)に従って、その事業年度の関連会社間取引金額などを記載した付表を確定申告書に添付し、事業年度終了の日から150日以内に歳入局へ提出しなければならない。

④の「提出しなければならない」も大きなポイントです。
他の各国の移転価格関連法を見てみると基本的には保存義務であり、自主的な提出義務ではありません。
保存義務とされた上で、提出にあっては「税務当局から提出要求があった後、30日以内に提出しなければならない」などの文言が記載されています。

保存義務であれば、(すぐに提出を求められるとは考えづらいため)作成にはある程度余裕を持って対応することができますが、自主的な提出義務であるタイにおいては移転価格ドキュメントの作成を待ったなしで行わなければなりません。

【ローカルファイル・マスターファイルの提出について(2017年6月21日の修正法案より)】
法人税申告書の提出日から5年以内に、移転価格税制の対象となる法人に対し、移転価格の算定・分析に必要な文書若しくは証憑(ローカルファイル・マスターファイル及び関連証憑と考えられます)の提出を求めることができる。提出を求められた納税者は、その通知を受けた日から60日以内に当該書類を提出しなければならない。
ただし、税務調査官は自身の裁量により、通知日から120日を超えない範囲内で、その提出期限を延長することができる。
⇒つまり④の「提出しなければならない」は上記の付表の提出に紐づくよう(各国と同様に付表の提出を申告時には行う)、マスターファイル・ローカルファイルに関しては、提出を求められてから提出するように定まりました。また、罰則規定に関して20万バーツと変更になりましたが、付表の提出ができなかった場合及びマスターファイル・ローカルファイルの提出要求に応えられなかった場合両方において科される立付になっています(歳入法71条の3に掛かるように定められているため)

⑤の「罰金40万バーツ20万バーツ」ですが、適用対象法人が期限内に移転価格ドキュメント(おそらくはマスターファイルとローカルファイル)を提出しない場合(2017年6月21日の歳入局HPに掲載された修正法案においては、上記付表も罰則の対象になるものと考えられます)、提出しないだけで罰金40万バーツ20万バーツとされています。

直近で移転価格税制(PMK213)が改正されたインドネシアにおいては4か月以内の保存とされていましたが、しっかりと4か月以内で保存できた会社は全体の10%程度でした。ただし、インドネシアとは違いタイは40万バーツの罰金が待ったなしで科されることになりますので、事前の準備が非常に重要です。

具体的には、改正前からコンサルに見積を取ること、監査を対応するコンサルと改正年度の決算スケジュールの事前確認を行っておくこと、移転価格ドキュメント作成に必要になる資料を事前に集めておくこと、これらのことを行っておくだけで、急な改正があったとしても対応することができます。

OECDの最終報告書の行動13において移転価格ドキュメントについて記載されています。その中に2020年までに各国がBEPS PROJECTに従って国内法を整備したかのレビューを行うとありますので、遅くとも2019年にはタイの移転価格税制の改正があると考えられます。

2017年中に改正があり2018年から対象となるか、2018年中に改正があり2019年から対象となるか、2019年中に改正があり2020年から対象となるかは不明ですが、3年内に必ず改正があることは間違いないと思います。

多くの国に展開している多国籍企業であれば、他国での経験で対応できることも多いかと思いますが、タイ以外でローカルファイルを作成していない場合などはかなりの時間を要してしまうことも考えられますので、事前の準備はしっかりと行っていただければ幸いです。

移転価格税制の概要の説明は初回無料で行っていますので、ご興味があれば是非ご連絡ください。
その他のタイ会計コラムはこちら

タイトルとURLをコピーしました