人的資本経営ついて

人的資本経営とは?

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。昨年は戦争やインフレなど、今も収束しない2020年からのコロナ禍に加えて世界情勢に大きな影響を与える出来事が噴出しましたが、今年はもう少し穏やかな年になることを期待したいものです。当コラムでも昨年に引き続きビジネスに関わる方々へ少しでもお役に立てる情報をお伝えできればと思います。

さて、昨今、「人的資本経営」という言葉をよくみかけるようになってきたと感じていませんか?これは2020年に第一版が公表された人材版伊藤レポートをきっかけとして広まった言葉ですが、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限引き出すに引き出すことで中長期の企業価値向上につなげる経営の在り方と、経済産業省が定義を示しています。

元々日本には人を大事する経営とか、経営者の最大の責務は雇用を守ること、などと提唱されてきましたが、社員を家族の一員とする風潮はあったものの全般的には人材を投資の対象である資本として捉える視点は薄く、社員を一律に年功序列のスキーマの中で処遇するのが人事領域での主流の考え方だったと思います。人的資本経営は単に社員をもっと大事にしましょうという話しではなく、リターンを最大化すべく投資の対象として捉えようという考え方であるのが従来の人事系の経営施策と異なる点かと思います。


注目される背景

経済のグローバル化、SNSによる即時の情報伝播、AIによる業務の自動化等により、新しい製品やサービスの賞味期限はどんどん短くなり、技術の優位性を保つためには常にイノベーションを起こし続ける必要が強まってきました。そのような環境下で企業が競争に勝ち続けるためには、社員がいかに画一的な発想を抜け出して新しいアイデアを生み出して魅力的な製品やサービスを生み出せるかが企業の競争力の優劣を決めるといっても過言ではありません。そのために社員に自らの才能や能力を最大限発揮してもらえるよう、企業としての効果的な人材投資が企業価値向上の観点からも重要テーマとして注目されるようになってきたというわけです。多くの機関投資家でも企業が人材投資に積極的かどうか、投資の判断基準として重視する傾向が強まっており、今後経営サイドとして注意をより払わなければいけないテーマだと言えるでしょう。

可視化と開示の動き

上述した人材版伊藤レポート、さらには本年8月にも内閣官房より上場企業向けの人的資本に関する開示のガイドラインが公表され、人的資本の可視化と開示も大きなテーマとなりつつあります。この分野で先行しているヨーロッパではこの分野での任意開示基準であるISO30414やSASB等に準拠した開示を行う企業が増えており、今後は内容の充実と比較可能性の充足に焦点が移りつつあります。環境対応のテーマでも同様ですが、企業として取り組んでいると主張するだけでは不十分で、今後人的資本経営の分野でも客観的で信頼性の高い情報開示が求められることになるでしょう。

今後の企業の取るべき対応

いきなり人的資本経営を心がけているかと投資家から問われても、自社の対応を即答できる企業はまだ少数派かと思います。前述の人材版伊藤レポート2.0にもあるように、まずは自社が人材を資本とみなした人材戦略と呼べるレベルのものがあるか、さらに当該人材戦略があるとして経営戦略との連動はあるのか、検証する事がファーストステップと思われます。開示を悩むのはその次の段階です。人的資本経営は生身の社員を対象としたものであり、経営戦略の巧拙はダイレクトに社員から反応があります。社員が新しいアイデアを出してモチベーション高く仕事してくれるかどうか、経営戦略レベルでの課題の抽出が急務です。そのためには社内の階層を越えた対話を重ねることも必要になります。人的資本経営は企業の根幹に関わるテーマであり、対象範囲も広いので今後も何度かこの話題を取り上げて皆さまとご一緒に考えていきたいと思います。

今回コラムを執筆頂いた方のプロフィール

鎌倉 俊太郎 (ペンネーム)

某大手コンサルティングファーム 監査役

日本公認会計士。慶応義塾大学卒。大手ITベンダー、コンサルティングファームにて、IT、会計分野における企業のコンサルティングに多数従事。(ご本人の希望により、仮名で記載しております。ご了承ください。)
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