
いまさら聞けないDXとは?【連載 第2回】
「DX」という言葉、耳にされたことはございますか?
「DX」とは、「デジタルトランスフォーメーション」の略で、企業あるいは社会全体のIT化、デジタル化といった、ぼんやりとしたイメージを抱かれる方も多いことと思います。
「デジタルトランスフォーメーション」とはいったい何なのか?全5回のコラム形式で、ビジネスパーソンとして押さえておきたい「DX」の概要をまとめます。
連載第2回目は、DXという言葉の意味を掘り下げて考えてみます。
DXという言葉の意味
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は、以前からありましたが、日本では2018年9月に経済産業省がDXレポート『ITシステム2025年の崖』という衝撃的なタイトルのレポートを発表した事がきっかけとなって広く世間に知られるようになりました。今日ではビジネスの世界のみならず、行政の世界でも広く聞かれるようになったので、皆様も一度は目にされたことがあるのではと思います。特に日本では昨年コロナ禍対応で国民一人ずつに定額給付金10万円を配布しようとした際に、行政のシステムの問題で多くの市役所の職員が手作業で確認手続を行う羽目になり、日本がデジタル後進国であることが白日のもとにさらされた経緯も皮肉ですが、DXに関心を集めさせた一因かもしれません。
DXの影響は社会全体に及びますが、当コラムはビジネスパーソンの方々を対象としているため、対象を企業にしぼって話をすすめたいと思います。DXという言葉自体は、元々スウェーデンの教授が提唱した、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことを指します。 最近では主にビジネス用語として「デジタル技術を活用した、新しい時代に対応するための企業変革」という意味合いで用いられることが多いようですが、あくまで概念なので言葉の定義自体はこの程度にしておこうと思います。
DX事例の大半は参考にならない
上述したようにDXという言葉自体は概念に過ぎないため、様々な理解、解釈が生まれました。当たり前のようにITベンダーのセールストークにも使われるようになり、様々なDX事例が世の中に紹介され、かえって「いったいDXって何なの?」という誤解や混乱が引き起こされました。
DX事例の一つとして、ネットフリックスがDVDの郵送レンタルから、動画ストリーミングにビジネスモデルを変革して急成長した経緯がよく取り上げられます。しかし多くの企業、特に製造業にとっては考え方や取り組みのアプローチはともかく、直接的にはあまり参考にはならないように思われます。デジタル技術の適用範囲があまりにも広く、適用事例がバラエティーに富むため、従来のように他社の事例を参考にして我が社の変革をすすめようとしても、そもそもしっくりする事例が少ないのは仕方がないのかもしれません。
IT化による業務効率化でもない
それでは手を付けられることから始めようと、まだIT化されていない業務の効率化をDXと称して新しいソフトウェアパッケージを業務別、部門別に導入したりすると、部分最適化は実現出来たとしても、会社全体として統制の効かない、データの一元管理、活用も出来ない個別システムの集合になりがちです。
これは従来のシステム化アプローチそのものであり、DXに該当する取り組みとは言い難いと思われます。DXレポートが発表される前に、主に金融機関でRPA(ロボットプロセスオートメーション)が流行りましたが、これなどは人の作業をそのままソフトウェアに置き換えただけであり、人件費は一部IT化で削減できたものの、かえって無駄な業務プロセスを温存させた側面もあると考えています。
DXの旅はどの企業も始まったばかり
「あれでもない、これでもないと言われて、それではDXと言われて、いったい何から手をつければいいんだ?」と言いたくなりますが、そこは一呼吸置きましょう。まだ多くの企業、特に中小企業では取り組みすら始まっていない企業が多い段階なのは、前回お伝えした通りです。デジタル技術の可能性、革新的な利用形態に気が付いて、実際に取り組み始めた企業が急速に台頭する時代です。そのような社会の変革期に居合わせた幸運を享受するためにも、少しの手間をかけて知識や情報を得ていこうと考えただけで優位に立てると思います。
当コラムがそのように考えていただいた方にわずかでも情報提供が出来るよう、連載を続けたいと考えています。次号では、自社がDXへの取り組みのどの段階にいると考えればいいのか、ご一緒に考えていきたいと思います。
当コラムは、全5回の連載となります。ビジネスパーソンとして知っているべきDX関連のお役立ち情報をお伝えします。第3回「弊社はどの段階にいるのか」、第4回「まず何をすべきか」、第5回「DXを推進する上でどのような障害があってどう乗り越えていったらいいか」と続きます。気軽にお付き合いいただければ幸いです。
今回コラムを執筆頂いた方のプロフィール | |
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鎌倉 俊太郎 (ペンネーム) 某大手コンサルティングファーム 監査役 日本公認会計士。慶応義塾大学卒。大手ITベンダー、コンサルティングファームにて、IT、会計分野における企業のコンサルティングに多数従事。(ご本人の希望により、仮名で記載しております。ご了承ください。) |
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