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コラム執筆者 Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd. 片瀬さん
Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd.
President Yohei Katase
【プロフィール】
日本の大手税理士法人にてそのキャリアをスタートさせる。日本国内の税務業務を経験した後、その活動のフィールドを海外に移す。アセアン各国の税務及び日本の国際税務を専門とし、国際税務関連の書籍の執筆も多数行っている。2012年からは、現地でのコンサル会社の立上げのために単身でメキシコに渡り、日系企業(自動車関連)の進出から進出後の会計税務、人事労務までをワンストップでサポート。メキシコから帰国後は、アセアン各国を自身のフィールドとし、2016年7月からタイのバンコクにてBridge Note(Thailand)Co.,Ltdの代表者として活動中。

OECDのBEPSプロジェクト


皆様こんにちは、Bridge Note (Thailand) Co.,Ltd. の片瀬です。
前回のコラムは、“タイにおけるPE認定課税”というタイトルで国際的に指摘の多くなってきているPE認定課税についてお伝えしました。

そのPE認定課税のお話の中で、“※「OECD・BEPSプロジェクトの行動計画7」において「契約の分割による“建設PE”認定回避への対応」が定められています。“と記載したのですが、「BEPSプロジェクトっていったい何?タイに関係あるの?」というお声をいただきましたので今回はこのBEPSプロジェクトについてお話できればと思っています。

OECDのBEPSプロジェクト

皆さんは“ダブルアイリッシュ&ダッチサンドウィッチ”という節税スキームを聞いたことがありますか?

これはアイルランドとオランダの(使用料課税がない)租税条約を利用し、アメリカで得た利益を無税でタックスヘイブンである英国領バージン諸島に移転するというアップル社が利用していた国際的にも有名な節税スキームです。

BEPSプロジェクトについては、このような各国の国内法及び租税条約の違いを利用した節税スキームをアメリカの大手企業がこぞって取り入れたことから端を発します(多くの節税スキームが裁判で争われましたが、「違法」ではないが「不当」という曖昧な結論となっているものが多いです)。

アップル社、Google社、アマゾン社などのアメリカの大手企業によって利用されたこれら節税スキームはアメリカ国内において大きな問題とされてきました。

ただし、アメリカ国内でいくら問題になろうともアイルランドとオランダの租税条約についてアメリカが口出すことは難しいために、アメリカは2012年6月にOECD(Organisation for Economic Cooperation and Development:経済協力開発機構)の租税委員会本会合にて、税源浸食と利益移転(通称:BEPS「Base erosion and profit sifting」)が法人税収を著しく喪失させているとの問題提起(合法であるために、国際課税原則を見直す必要性の提言)を行い、同年11月にBEPSプロジェクトが発足したのがすべてもの始まりです。

その後も、2013年6月にBEPSにおける行動計画が公表(行動計画⇒第一次提言⇒討議草案公表⇒最終パッケージ公表)され、現在では15の行動計画における最終パッケージの公表までが完了し、この最終パッケージを基に各国の国内法が再度整備されているという状況にまで話が進んでいます。

OECDのBEPSプロジェクト

まずはイメージ付けからですが、つまりは「全世界統一のルールを作り、タックスヘイブン国へのむやみな利益の付け替えを防止しよう!」という目的の下に各国が統一のフレームワークを作り、それを基に国内法が整備されているのです。

このフレームワークこそが“15の行動計画”になります。
※国際会計基準(IFRS)の税務版とイメージしてもらえればと。

現在は多くの国の会計基準がIFRSに準拠したものと変わっていると思いますが、国際税務基準もこのBEPSに準拠したものに変わることが既に起こり始めているのです。

このBEPSプロジェクトですが、2017年現在の参加する国・地域の数は94にも上ります。

タイは現在、この94の国・地域には含まれていませんが、近い将来BEPSプロジェクトへの参加を余儀なくされるものと思われ、あくまでも個人的には2017年中には参加を表明することになるのではと考えています(2017年1月26日に、OECDの「税の透明性と情報交換に係るグローバルフォーラム」に139番目のメンバーとしてタイが参加し、これによってタイにおいてもBEPSプロジェクト参加への足掛かりを作っているものと思われます)。

もし、タイがBEPSプロジェクトへ参加した場合に皆さんにインパクトがある一番の項目は、“移転価格税制”となります。

特に行動計画13の“文書化”に関しては、現在タイには文書化の規定がありませんので多くの日系企業がタイにおいては移転価格の文書化を行っていません(今までは、“歳入局通達No.Paw113/2545”より移転価格調査の際に各種文書を求めるの文言しかありませんでした。
←こちらについても歳入局通達のために法的拘束力はなし)。

ただし、BEPSプロジェクト参加のあかつきには、こちらが法制化されることになります(最近では、BEPS行動計画に則りインドネシアで法制化されました。

日本(2016年度税制改正)や中国(2015年特別納税調整実施弁法改正)は既に法制化されています)。
※インドネシアや中国の移転価格ルールについても、不明なことがあれば個別にご連絡いただければと思います。

タイにおける移転価格税制の今後や、文書化規定が法制化された際に上記インドネシアや中国でどのような不都合が生じているかは次回以降のコラムで執筆するとして、今回はこのBEPSの行動計画の概要をお伝えします

まずはどのような項目があるのか大枠で押さえていただければと思います。


BEPS15の行動計画(最終パッケージ)


参考(国税サイト):https://www.nta.go.jp/sonota/kokusai/beps/index.htm
行動計画1:電子経済の課税上の課題への対処
行動計画2:ハイブリッド・ミスマッチ取極めの効果の無効化
行動計画3:外国子会社合算税制の強化
行動計画4:利子控除制限ルール
行動計画5:有害税制への対抗
行動計画6:租税条約の濫用防止
行動計画7:恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止
行動計画8-10:移転価格税制と価値創造の一致
行動計画11:BEPSの規模・経済的効果の分析方法の策定
行動計画12:義務的開示制度
行動計画13:多国籍企業の企業情報の文書化
行動計画14:相互協議の効果的実施
行動計画15:多数国間協定の策定

今後、この行動計画を基にどのように租税条約や各国の規定が変わっていくかを、前回の恒久的施設:PE(行動計画7:恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止)の基準を例に出してお伝えできればと思います。

前回のコラムでは、「タイ子会社が日本親会社から仕入を行いタイ国内の他企業へ販売するという仕入販売方式」から、「タイ子会社が日本親会社へタイ国内の他企業を紹介し手数料収入(モノの売買は日本親会社とタイ国内の他企業)を得る問屋(コミッショネア)方式」にビジネスを変更することによって代理人PEを指摘されることが多くなるとお伝えしました。

これは仕入販売方式から問屋(コミッショネア)方式に変更することによって減少する課税水準に対する指摘なのですが、現状の租税条約ではこの独立代理人の定義が明確ではなく、これがBEPS(税源浸食及び利益移転)の原因となっていました。

該当する租税条約のPE認定課税パートを見てみましょう。
どのようにBEPSが利用されていたかを確認してみてください。


現状の租税条約(5条7項:独立代理人規定)


一方の締約国の企業は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する独立代理人を通じて他方の締約国内において事業を行っているという理由のみでは、当該他方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされない。

独立代理人」という用語の定義がここでは非常に大切なのですが、この部分が明確ではなく、いろいろな解釈がありました。

ある論文には「ただ一人の顧客(本人企業)」のために活動している代理人については、その独立性に疑義」とあり、親会社だけのために活動していなければ独立代理人に該当するというような解釈もなされていました。

つまり、問屋(コミッショネア)方式に変更し、親会社が利益率を管理、親会社(タックスヘイブン国)への利益の移転ということが自由にできてしまっていたのです。これが具体的にBEPSと呼ばれるものです。

この部分が問題となったために、BEPSプロジェクトの行動計画7においてPE認定についてもしっかりと言及されているのです。
おそらく今後、日タイ租税条約はこんな感じで改定されることでしょう。


今後の租税条約(5条7項:独立代理人規定)


一方の締約国の企業は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する独立代理人を通じて他方の締約国内において事業を行っているという理由のみでは、当該他方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされない。

ただし、専属的に又はほとんど専属的に関連する企業のために行動する者は独立代理人とはみなされない。
※関連する企業とは、直接又は間接に議決権等の50%超を有する場合、又は、事実上の支配関係がある場合をいう。

つまりBEPSプロジェクトというものは、BEPSの原因となっている各国の規定を統一すること及び規定を追加することを目的としているのです。

今後は、現在のBEPSプロジェクトに参加している94か国及び今後参加する国・地域の国内法及び関連する租税条約がこの最終パッケージを基に形作られることとなります。

ただし、このBEPSプロジェクトにおける最終パッケージは法的拘束力がなく、規定の網羅性もないために、各国の国内法整備の段階での不都合が既に起き始めています。

今のままでは網羅性がなく規定の大枠だけ統一してしまっているために、今までよりも国際的な二重課税や基準の差によるペナルティ対象となる事例が多く発生することになるでしょう。
租税条約は良いのですが、問題は国内法の整合をどのように取るかだと思っています。

昨今は税務調査において大きくもっていかれてしまうのは、国際税務関連についてが主かと思います。
もちろん事業を行っている限り、ビジネスが先に走り、BEPSプロジェクトの内容を受けて規定が後々に整備される形となります。

今までのビジネスがいきなり法的に難しくなる可能性すらあります。
法的に難しくなったとしても、利益が出ている当該ビジネスをいきなりストップすることは現実的には難しいですよね・・・。

今後どのようなビジネスが指摘を受けることになるか、現状の各国の規定等においてどの部分がBEPSとして改善されようとしているか、今後の国際税務規定がどのように変遷するかがBEPSプロジェクトを確認すると見えてきますので、ご興味がある方は、事前にしっかりと確認していただければ幸いです。

最後に


最後に、余談ですが、“行動計画13:移転価格文書”の最終パッケージは2015年10月5日に公表されました。
中国ではこの最終パッケージに合わせた移転価格文書の改正草案を2015年9月17日(同年10月16日までパブリックコメント募集)に公表しています。

日本においては2016年度の税制改正に合わせて公表(2015年12月16日)しています。
中国が公表してから日本が公表するまでの期間はわずか3か月。

わずか3か月なのですが、ちょうどそのころ移転価格税制の実務をやっており中国の実施弁法から読んでいたので、日本税制改正大綱との齟齬については中国の移転価格文書に合わせなきゃとならないという風に個人的に思ってしまっていました。

何が言いたいのかというと、BEPS行動計画に基づく共通ルールを全世界で作ろうという確固たるシナリオがあるために、いち早く行動計画に基づく改正案を出すことはイニシアティブを取るためにも絶対に意味があることだと思うのです。

今後は全世界での税金の取り合い合戦が始まります
特にインターネットビジネスは役務提供地が見えづらく、一定のルールに基づく公平な課税となります。

こういうのはルール作る側が勝つようにできているので、日本も存在感を示してもらいたいと思います。


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