本業への集中にはタイの会計サービス利用が必須!

サイトタイトル

会計サービスを事務所やソフト等の詳細から徹底比較。
基本情報から専門家にしか聞けない情報まで細かく提供。
タイで会計サービスを比較するならこのサイト!

お問い合わせはこちら
コラム執筆者 Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd. 片瀬さん
Bridge Note(Thailand)Co.,Ltd.
President Yohei Katase
【プロフィール】
日本の大手税理士法人にてそのキャリアをスタートさせる。日本国内の税務業務を経験した後、その活動のフィールドを海外に移す。アセアン各国の税務及び日本の国際税務を専門とし、国際税務関連の書籍の執筆も多数行っている。2012年からは、現地でのコンサル会社の立上げのために単身でメキシコに渡り、日系企業(自動車関連)の進出から進出後の会計税務、人事労務までをワンストップでサポート。メキシコから帰国後は、アセアン各国を自身のフィールドとし、2016年7月からタイのバンコクにてBridge Note(Thailand)Co.,Ltdの代表者として活動中。

タイにおける移転価格税制考察


皆様こんにちは、Bridge Note (Thailand) Co.,Ltd. の片瀬です。
前回のコラムは、“OECDのBEPSプロジェクト”というタイトルで最近よく耳にするBEPSプロジェクト(現在94の国・地域が参加)について執筆しました。

その中で、「タイはBEPSプロジェクトへの参加を余儀なくされ、もし参加した場合に一番インパクトがある項目は“移転価格税制”だ」と個人的な予想をお伝えしたのですが、今日はこの予想が顕在化した場合にどのように規定が変化するかを日本、中国、インドネシアの前例を基に考察してみようと思います。

まずは、BEPSプロジェクトの行動13を実際に確認してみましょう。

BEPSプロジェクトの行動13


タイにおける移転価格税制考察

グローバル企業が海外の子会社から利益を吸い上げようとする場合において、あまり多くのやり方があるわけではありません

配当により還流する方法、利息により還流する方法、取引により還流する方法、正直これぐらいしか利益の還流はできないのです。

配当により利益を還流すると課税済みの利益に対して更に源泉税が課税され、利息により会社規模にそぐわないくらいに多く還流すると過少資本税制の対象(支払利息が損金不算入)となります。

取引により還流する方法であったとしてもロイヤルティで還流すると源泉税がかかりますし、あまりに料率を引き上げると否認(損金不算入)されてしまいます。

ただし、それでも取引により(事業所得として)利益を還流できれば、その金額を軽課税国に集めることができれば、グローバル企業グループにとっては相当のメリットがあります。

どの会社も利益は軽課税国にプールして、再投資を軽課税国から外に向けて行いたいのです(資本取引は税金かかりませんので、資本取引により資金を諸外国にばら撒き、利益の回収は軽課税国へ)。

いくら移転価格税制が整備されたとしてもこのような思いをどの企業ももっているわけですので、なかなかBEPSを上手に取り締まることができません。

そこでOECDのBEPSプロジェクトにおいて、この移転価格税制をダイレクトで取り締まるための共通ルール(行動13)ができたのです。

こちらのBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトの行動13により、移転価格ドキュメントと今まで単一的に呼ばれていたものを明確に3層構造にするとされました。

行動13においては、新たな文書化ルールとして、マスターファイル、ローカルファイル、CbCレポート(Country By Country Report:国別報告書)の3つのレポートを作成すべきであると提言しています。

それぞれの記載内容について簡単に確認してみましょう。

各ドキュメントの記載内容



タイにおける移転価格税制考察

①マスターファイル: グローバル企業の事業概況を記載
②ローカルファイル: 関連者間取引に関する情報を記載
③国別報告書: 国別の所得配分、納税状況、経済活動の所在、主要な事業内容等を記載

こちらの行動13においては、マスターファイル・ローカルファイル・国別報告書(CbCレポート)をそれぞれ作成するように謳われているのですが、行動13の原文を確認すると、例えばマスターファイル記載要件の冒頭に「次の内容をマスターファイルに記載“すべき”」という文言で書かれており、あくまでも強制力を持ち合わせているものではないことが分かります。

ただし、各国のドキュメンテーション既定の現状(既に公表された移転価格規定)を見てみると幸いなことに、この3つのドキュメントに記載する内容には基本的に変わりはありません。

どの国においても行動13に基づき、国内法を整備しています。

では、各国でどのような部分が問題となっているのか。

問題個所



タイにおける移転価格税制考察

①文書の保存義務
②適用開始時期
③言語
④ペナルティの有無 など

なぜ、これらが問題となっているかというと、やはり行動13に強制力がないためと感じます。

具体的には、行動13の中には重要性について「各国の文書化の規定には、重要性を考慮し納税者に過大な負担にならないように配慮する。

特に中小企業は文書化の対象から外“すべき”」と記載されていたり、文書化の作成時期に関して「対象年度の税務申告までに作成することが“望ましい」と記載されていたりするのですが、この部分は統一のルールではなく各国が自由に決めてしまっているという現状があります。

つまり、強制力を持ち合わせていない行動13における弊害がマスターファイル・ローカルファイルの記載内容ではなく、その他の詳細事項に表れてしまっているのです。

中国と日本の文書化規定で問題になった個所を具体的に見てみましょう。

日本におけるマスターファイル作成保存義務 ※平成28年度税制改正



タイにおける移転価格税制考察

①記載項目
マスターファイルの記載項目は、移転価格ガイドライン改定案の別添1に記された記載項目と同様とする
②対象企業
連結総収入金額が1,000億円未満の多国籍企業グループについてはマスターファイルの提供義務を免除する(その他はe-Taxにより、税務署長に提供)
③適用開始年月日
平成28年4月1日以後に開始する最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、e-Taxにより税務署長に提供する必要がある
④言語
日本語又は英語を使用する

この①~④に紐付く中国の規定を下記にそれぞれ書き出してみると以下の通りです。

中国におけるマスターファイル保存義務 ※平成27年特別納税調整実施弁法(意見募集稿)



タイにおける移転価格税制考察

①記載項目
マスターファイルは多国籍グループ企業のグローバル業務の概況を開示し、~以下割愛~
②対象企業
関連会社間取引が2億元(棚卸:30億円程度)、4,000万元(役務:6億円程度)超の取引がある会社又は限定的な機能、リスクで赤字の会社は、同時文書(マスターファイル、ローカルファイル、特殊事項ファイルを含む)作成保存しなければならない
③適用開始年月日
関連取引が発生した年度の翌年の5月31日までに作成保存し、税務局から要求された日から20日以内に提供しなければならない
④言語
中国語を使用する、ただし、原始資料が外国語である場合、中国語の副本を添付しなければならない

長くなりそうなので、主なところを解説すると、マスターファイルは“究極の親会社(グループ企業の親会社)”が作成するものであり、日系企業であれば日本本社がそれに該当します。

日本ではマスターファイルの作成義務は1,000億円以上の究極の親会社と定められていますが、中国において2億元、4,000万元、赤字企業に関しては子会社で保存する義務があるのです。

適用開始年月日も日本企業に合わせて作成していれば、中国の適用開始年月日には間に合いませんでした。言語も中国語の副本が必要ですし・・・、とこのように細かいところのルールは異なっているのです。

次に保存義務違反に係る罰則を比較してみます。

①日本(平成28年度税制改正:追加項目)
期限までに移転価格文書を税務署長へ提出しなかった場合には30万円以下の罰金とする

②中国(平成27年特別納税調整実施弁法(意見募集稿))
利率は税額の帰属する納税年度の12月31日に適用される税額追徴期間と同期間の中国人民銀行の人民元貸付基準利率に5%を加えて計算し、1年365日として日割り計算する。(追徴税額に当該利息部分が加算される、その他罰金は、最高5万元)

正直、中国の罰則は厳しい(指摘される可能性も高い)ので、日本に比べて文書化対応している企業が多い現実があります。

各国の罰則の違いによって、その国においてローカルファイルを保存するかの判断をしている企業が多い現実があります。そのため日本企業の多くが様子見であることもまた事実です。

次にインドネシアの規定を参考までに見てみましょう(2016年末改正←直近に改正がありました)。


インドネシアにおけるマスターファイル・ローカルファイル作成保存義務 ※PMK213


タイにおける移転価格税制考察

①前年度の年間総収入金額が500億Rp(5億円程度)を超える場合
②有形固定資産取引が200億Rp(2億円程度)を超える場合
③役務提供取引が50億Rp(5千万円程度)を超える場合
④インドネシア法人所得税率よりも低い税率の国の関連者と取引を行っている場合

金額は中国のそれよりも更に低く、また、④の低い法人税率(日本含む)の場合にはマスターファイル・ローカルファイルの保存が必要になります。

つまり日本はインドネシア25%より低い税率23.4%であるために、インドネシアの法律(PMK213)上、日系企業は文書の保存が必要となります。

ただし、現在インドネシアに保存義務違反のペナルティはありません
規定ができたばかりであり、実務上どのように取り扱われるかの状況は未だ定かではありませんが、個人的には様子見とする企業が多いように感じています。

実務上の対応としてドキュメントの提出は、税務調査時、調査の事前確認時などに要求されることとなりますので、それがあった際には“運が悪かったと諦めて”法律にある30日以内の提出(インドネシア法、日本法は45日が規定)を行うことになるものと感じています。

移転価格のドキュメンテーションについて、特急料金は必要となる可能性が高いですが、30日あれば作成することは可能です。

※ただし、インドネシアの場合には申告書の添付に文書化の有無を記載しなければならないフォームがあるために、このあたりもどのように取り扱われるかは注意が必要です(便宜上、文書化ありと記載するとどこまでリスクがあるのかなど)。

この場合に注意すべき部分は、「マスターファイルに移転価格ポリシーをどこまで含めるか?」、「移転価格ポリシーとローカルファイルの整合をどこまでとるか?」、「ローカルファイルは簡易的にTNMM(Transactional net margin method:取引単位営業利益法)で作成するか?」、中小企業の移転価格対応では現実的にこのあたりになるかと思います。

既にローカルファイルを作成している会社は、ローカルファイル➡マスターファイルの作成となるために、マスターファイルがインドネシアへの提出用のマスターファイルとなりそうです(本来はポリシーがあって、各国のローカルファイルへ落し込むという流れ)。

※簡易的にTNMMでまとめて作成することも可能ですが、例えばインドにおいては既にTNMMで輸入取引を集約することはできないとされた判例(2016年4月)などがあるので、どこまでTNMMでやるかは検討が必要となります。

さて、各国において整備された移転価格のルールはこのような感じです。おそらく近い将来整備されるタイの移転価格税制(文書化)においても「マスターファイル」、「ローカルファイル」、「CbCレポート(国別報告書)」、これらの書類の記載内容は他の関連諸国と変わるものではないと思われます。

問題となる項目は、上記の「問題個所」の通りであり、特にマスターファイルは日本において作成義務がないが、タイで保存義務があるということが起こるものと予想されますので、この部分は特に注意してください(保存義務違反・提出義務違反のペナルティについても併せて確認)。

今後タイで移転価格の文書化が本格的に取り入れられた場合には、多くの企業がどのように対応するのか、その対応に苦慮することになります。

もちろんドキュメンテーションが可能であればそれに越したことはないのですが、現在の日本のコンサルを利用するとマスターファイルの作成がポリシー含め200万円程度であり、各国のローカルファイル対応が100万円程度になるかと思います。

この費用とリスクを比較して、作成するかの判断をしていただければと思います。
※ちなみにローカル会計事務所がローカルファイルを作成する場合には20万円程度から作成できるように思います。

移転価格のリスクは、例えば海外子会社との取引が年間5億円として、税務当局から5%の所得移転が指摘された場合は2,500万円の所得が加算されます。

移転価格税制は最長6年さかのぼることができますので、加算される所得の合計は1億5千万円となります。

この時の追徴税額は、延滞税や加算税を含めると7,000万円~8,000万円程度(たった5%ですよ。
もし1%だとしても税額が1千万円を超えます)となり、中小企業がとても負担できる金額ではありません

国税当局から公表されている移転価格での追徴課税の平均額は6,000万円程度ですので、関連会社間取引が5億円~10億円ぐらいの規模もターゲットとなっているように思います。

以前、国税のOBの移転価格専門の税理士と仕事をしていたときに、その先生から「最近は総売上高が50億円~100億円程度でも“移転価格調査”に入られている」ということを聞きました。

少し前までは100億超の中堅企業以上に入っていたものが、(大きいところのローラーが終了してしまったため)その調査の規模を少しずつ小さくしていますので注意してください。

特に50億円~100億円で国外関連会社との取引が5億円~10億円ぐらいの企業は今まで移転価格調査の対象となっていませんでしたが、今後はメインのターゲットとして日本の税務当局も確認し始めることになりますので、その認識をしっかりともっていただければ幸いです。

※まずは売上規模でローラーをかけて、その次のフェーズとして関連会社取引の規模を確認する、その上で毎年の利益率の水準を確認して、調査対象を決定するような感じです。

さて、書いている間にテンションが上がってしまい(笑)長くなってしまいましたが、今後タイでも移転価格の文書化ルールが整備されることは明らかであり、今はタイミングがいつになるかという状況です。

2017年1月26日にOECDの「税の透明性と情報交換に係るグローバルフォーラム」に139番目のメンバーとしてタイが参加し、おそらくBEPSプロジェクトについても近い将来加盟するものと思います。

そうすれば移転価格のルール改正は待ったなしで行われるために、今年中、遅くとも来年中には移転価格の文書化のルールが整備されるものと思っています。

この部分について、私も常に情報は集めておりますので不明なことなどありましたら、お気軽にご連絡をいただければ幸いです。



その他のタイ会計コラムはこちら